帰宅願望が生じる主な要因5つ
1・時間の感覚や自分が置かれている状況が分からない
例えば
- なぜ自分が老人ホームにいるのか分からず、「妻が待っているから家に帰りたい」と言う
- 退職しているが「仕事に行かなければ」と会社に行こうとする
- 過去に犬を飼っていた方が「犬が待っているから散歩に行かないと」と言う
といったものです。
自分の現在の状況が自分自身で把握できていないため不安を感じて、安心できる場所に帰りたいという感情が生まれるのではないかと考えられます。
2・夕暮れ症候群
夕暮れ症候群というものもあります。薄暗くなり始める夕方の時間帯が帰宅願望の症状が出やすいため、このように言われています。
夕方になると学校や職場から家族が帰宅したり、夕食作りを始めたりと忙しい時間帯です。
また、施設では送迎の時間などで人の出入りが激しくなり慌ただしくなるため、周囲の忙しない状況にそわそわとして落ち着かず、自分も帰らなければと身支度をして出て行こうとすることがあります。
前述の見当識障害の症状もあいまって、子供の夕食作りをしていた時期に感覚が戻ってしまい「夕食を作らないと」という長年の生活習慣が染みついていることにより、帰りたいという感情が生まれることもあります。
夕方になり、帰宅ラッシュや子供たちが家に帰る姿を見ると、自分も家に帰ろうという気持ちが湧くことは、私たちにも想像のつく感情ではないでしょうか。
3・環境の変化に対応できない
単純に慣れ親しんだ自宅から施設に生活拠点が変わったという、急な環境の変化に対応できていないことも考えられます。
自分の部屋が快適に過ごせる環境でなかったり、職員の方や別の入居者の方とコミュニケーションがあまりとれていないと居心地が悪く感じてしまい、自分の居場所がある家に帰りたいという感情が生まれてきます。
慣れない場所に行ったら誰だって不安になるものですので、少しでも不安を取り除いてあげれるように考えていければと思います。
4・介護されている自分を認めたくない
介護されている自分を認めたくないという感情を持っていることもあります。
- 着替えや食事など、自分でできていたことがうまくできなくなった
- 物忘れが多くなり周囲の人に迷惑をかけてしまうことがでてきた
- 自宅では父親や母親、会社では部長という立場だったのに、ここでは介護されている
というようなことがあると、なかなか現状が呑み込めず、老いた自分を拒否したいと感じる方もいるでしょう。
もしかしたらご家族も、自分の両親や配偶者の老いをまだ受け入れられていないこともあるかもしれません。
本人も同じ気持ちで、まだ自分は大丈夫だから、自分がいるべきところに帰らなければ、という気持ちが生まれることがあります。
5・施設が合っていない
単純に施設が合っていないことも考えられます。本人と施設見学に行き、入居前に説明を聞いていない場合、施設自体がその方の志向に合っていないこともあります。施設を決める際は、ご家族と本人両方が納得した上で最終決定を行うようにしましょう。
帰宅願望はご自身にあてはめてみても相手の気持ちは理解できるのではないでしょうか。
不安な気持ちは人それぞれです。その気持ちにきちんと向き合い理解してあげて、ストレスを取り除いていけるように上手に声掛けしていきましょう。
本人に施設での生活を楽しんでもらい、大切なご家族を安心して預けることができるといいですね!
- 監修/原島 涼
- 2020年介護初任者研修取得。介護付き有料老人ホームにて勤務した後にリハビリ型デイサービスのレコードブック事業へ転職。介護の経験を活かした予防メニューがお客様の間でも話題のトレーナー。体のサポートのみならず心のサポートも強みの若手トレーナー。