なぜ嘘をついてしまうのか?
認知症の方は、なくなってしまった記憶を想像で埋め合わせることがあります。
忘れていることの自覚がなく、想像は事実と異なる場合も多いため、周囲から見ると嘘をついているように見えるのです。
また、記憶がないことを「忘れた」と思えない・言えない心理が、作り話につながるという側面もあります。
記憶がないことに対する不安や、会話している相手への気遣い、おかしいと思われたくないなどの心理です。
例えば「今朝の食事はおいしかった?」と家族に聞かれた場合、食事の記憶がなくても「せっかく作ってくれたのに」という気遣いから作り話で話を合わせるケースもあるかもしれません。
注意すべきなのは、認知症の方の記憶障害は普通の物忘れと違い、忘れたという自覚を持てない点です。
記憶の一部がぽっかりと抜け落ちているような状態になるため、自分のなかで現在の状況とつじつまを合わせようとした結果、それを事実と認識してしまいます。
これから出かけようとしたときにお財布が見当たらなければ、普通であれば「いつもここに置いてるんだけどな、どこに置いたんだっけ?」と記憶を遡り思い出そうとすると思います。
ですが、認知症の方はいつも置かれているところにお財布がないとなったら記憶を遡ることが出来ないため、盗まれたのではという不安から「〇〇さんに盗まれた」「空き巣に入られた」などと考えて想像で記憶を埋め合わせてしまうのです。
体験自体の記憶がないので本人は、「約束なんかしていない」とか「印鑑がない。盗まれた」と怒ります。「覚える」機能には支障をきたしますが、想起することはできるため、昔のことは思い出します。
この症状は、特に信頼している人の前で強く表れやすいという特徴があります。
外では問題ないのに家では作り話ばかりすると、家族がストレスを感じるケースもあるかもしれませんが、それも認知症の症状であるという理解が必要です。

- 監修/原島 涼
- 2020年介護初任者研修取得。介護付き有料老人ホームにて勤務した後にリハビリ型デイサービスのレコードブック事業へ転職。介護の経験を活かした予防メニューがお客様の間でも話題のトレーナー。体のサポートのみならず心のサポートも強みの若手トレーナー。